25thANNIVERSARY
SPECIAL INTERVIEW
インタビュー
自分の手を動かして作る電子工作は楽しく、回路の原理を知るという意味でも大切だと思います。
はてな 執行役員
サービス・システム開発本部長
大西 康裕さま
Onishi Yasuhiro
PROFILE
2001年に創業メンバーの一人として「有限会社はてな(当時)」に入社。入社後は主にエンジニアリングを担当し、チーフエンジニアとして全サービスの開発や技術部の指導・育成に携わる。その後、はてなブログの立ち上げや事業化を指揮し、2014年8月より執行役員 サービス開発本部長を経て、2016年8月より現職。
https://hatenacorp.jp/
― 大西さんがエレキットで遊んでいたのはいつごろですか?
主に小学校高学年〜中学生のころだったと思います。ゾウのような形をしたライントレーサー・ZOOやグランドミニピアノ、ムービットやラジオなど、たくさん作りました。確かキットの中に申込書が封入されていて、電子くらぶも定期購読していましたね。3歳上の兄がパソコンを持っていたので、早くからコンピューターや回路に興味がありました。小学校の卒業文集には“パソコンを作る人になりたい”と書いたくらいです。
― 電子くらぶの中でとくに好きだったコーナーを教えてください。
おたよりLAND、読者が作った改造例や自作キットのコンテストなどの読者投稿のコーナーです。同じ趣味を持った人が集まり、顔も知らない者同士で盛り上がることができるというのは刺激的なことでした。ページの下のところに読者と編集部のコメントが1行載っているのも面白くて、隅々まで読んでいましたね。
― ちなみに、大西さんは何か投稿されたことはありますか?
おそらくなかったと思います。奥手な子供だったので(笑)。インターネットが台頭してからは情報収拾や意見交換の効率が上がり、最終的には私もソフトウェアのエンジニアになったわけですが、電子くらぶが原体験だなと思います。
人のつながりを生むコミュニティに興味を持つきっかけにもなったという読者投稿のコーナー。当時は、専門誌の読者欄と言えば自分と似たようなタイプの様々な人の存在を知ることができる数少ない手段だった。
― ちなみに、大西さんは何か投稿されたことはありますか?
おそらくなかったと思います。奥手な子供だったので(笑)。インターネットが台頭してからは情報収拾や意見交換の効率が上がり、最終的には私もソフトウェアのエンジニアになったわけですが、電子くらぶが原体験だなと思います。
― 以前自身のSNSにお子さんとエレキットを作ったと書かれていましたね。
はい。私は普段京都に住んでいるのですが、昨年家族で東京旅行をした際に、秋葉原のホビーショップでエレキットを発見したんです。まだ残っていたことを知って嬉しかったですね。さらに中1の我が子がほしいと言ったキットが、私が同じ歳のころに作ったグランドミニピアノだったので感動してしまいました。ハンダゴテを触るのも初めてなのに、試しにハンダ付けをさせてみたらきれいな山型にできて、親バカですが才能あるなと思いました(笑)。本人も楽しかったようで、またやりたいと言ってくれました。
今回取材をするきっかけとなったのは、大西さんご自身のSNSの投稿をチェックしたことから。
― 親子2代で同じものを楽しめるというのは素敵なことですね。
30年前とほぼ同じものが残っているということ自体が貴重になりつつありますよね。私も子供のころハンダ付けにハマって、90個以上もハンダ付けすることができるデカデジクロックを作ったりしていましたが、時代が流れても子供が楽しいと感じるポイントは変わらないんだなと思いました。回路の高集積化が進み、ホビーである電子工作と今世の中で使われているものの間にはかなり乖離がありますが、自分で手を動かして簡単な電子工作をするのは楽しいし、原理を知るという意味でも大切だと思っています。
― エレキットを作ったことが現在の仕事に活きていると感じる部分はありますか?
大いにあります。プログラミングも電子工作も、もともと存在するものを真似ることから始まり、改造・設計をして楽しんでいくうちに、自分でゼロから生み出せるようになる。残念ながら私は電子工作に関してはそこまで到達できませんでしたが、ルートが違っただけでやっていることは同じなのかなと思います。自分の手で作ったもので楽しんでもらうという根底の部分は、ハードもソフトも一緒ですしね。
― プログラミングにも早くから触れていたのでしょうか?
そうですね。これもまた兄の影響で、彼が持っていたマイコンBASICマガジンを私も読んで、小学3年生からBASICのプログラミングを書いたりしていました。アニメを見たりゲームをしたりというのと同じ感覚でしたね。電子工作やプログラミングは一人でできるのがいいところだと思います。例えば家を建てるのは一人ではなかなか難しいですが、プログラミングなら一人でサービスを作ることができる。自分の手を動かすことで世の中を変えられるというのがいちばんの魅力かなと思います。
― では最後に、今後「イーケイジャパン」に期待することを教えてください。
子供たちに電子工作の面白さを伝えようとしている企業は他にはなかなかないので、エレキットに出会うきっかけがもっと増えればいいなと思います。プログラミングだとNintendo Switch上で楽しめるプチコンというツールがあったりしますが、電子工作はそういうものが少ないですよね。ゲーム機やYouTubeなど、子供の目に触れる機会が多いものと何か絡んだりすると、もっと電子工作の魅力を知ってもらえるのかなと思います。プログラマーを目指す子はゲームから入ることが多いんです。まず与えられて、人が作っているんだということを知るところから始まる。そういうきっかけは大事ですよね。電子工作から入ってゴールをどこにするかは人それぞれですが、それもまた夢があっていいと思います。
25周年のお祝いメッセージ
25周年おめでとうございます。かつて自分が遊んでいたエレキットを今、中学生の我が子が同じように楽しんでいることが感慨深いです。これから孫の世代、さらにその次の世代までもが楽しめるよう、学習工作キットの良さを残していただきつつ、今後ますますのご発展をお祈り申し上げます!
はてな 執行役員 サービス・システム開発本部長
大西 康裕さま