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6SN7GTの7、8番のヒーターの電極の電位を測ったところ、68Vもあり、驚きました。そこで、ヒーターの配線パターンをプリント基板上で辿ってみますと、C12のプラス側の半田付け近くで、6SN7GTの配線と繋がっているのを発見しました。この部分を切ったところ、電位が下がりました。ヒーター電位は本来アースにつなぐべきだと思いますが、添付の配線図上も、何処にもつながずに浮かした状態になっています。SRPP用にヒーター電位を高く持ち上げるためにこのようにしたのでしょうか?何故こうなっているのでしょうか?また、ヒー

弊社のアンプに限らず管球パワーアンプでは、NFBを初段管のカソードにフィードバックしているものが大半だと思います。カソードにフィードバックするということは、カソードがグラウンドからAC的にフローティングの状態です。

真空管のカソードはご存知の通り、中にヒーターが入っています。カソードから熱電子を出させるためにヒーターで熱するのですが、実はカソードよりもヒーターのほうが温度が高いことは言うまでもありません。

熱電子は「電子」いうくらいですから、正の電荷に引きつけられます。

カソードは、直接グラウンドに接続していない限り、グラウンドに対して必ず正の電位になります。

つまり、ヒーターの配線の片側をグラウンドに落としてしまうと、必ずヒーターの一部分がカソードに対して相対的に負の電位になってしまいます。と、いうことは、ヒーターからカソードに向かって、音声信号やバイアスとは無関係の熱電子が飛んでしまいます。

もちろん、ヒーターとカソード間はセラミックなどで絶縁されていますが、ごくわずかは漏れて流れます。「ごくわずか」ではありますが、初段管の入力部分なのでそれがノイズとして耳に聞こえるくらいの影響があります。

その対策として、ヒーター回路に、ヒーター電圧よりも高い正の電位のバイアスをかけることが非常に有効です。

代表的な電圧増幅管のヒーター~カソード管の許容電圧は80~150Vくらいが多いので、10~数十ボルトというのが適当なバイアス電圧というところです。

都合がいいことに、パワーアンプの場合はパワー管のカソード電位がちょうど良く、これを利用するのが常套手段です。

よく、左右のうち片側のカソードだけにつなぐのはおかしいのではないかと言われる方がおられますが、左右のカソードを接続することはできませんし、ヒーター回路が左右独立ならともかく、1系統なのでどちらか片側にしか接続できません。

「漏れる電子」の対策のためなので逆にヒーター回路からパワー管への影響を考えて、精神的に「片側だけ」が気になるのかも知れません。しかし、正のバイアス電圧をかけることにより、その「漏れる電子」がなくなるのですから、パワー管への影響は皆無です。 静電誘導のことまで考えても、パワー管のカソードはバイパスコンデンサでAC的にグラウンドに落ちているので影響はありません。


TU-872やTU-873シリーズはDC点灯をしていますので、ヒーターからの熱電子によるハムノイズの影響はもともと少ないので、片側グラウンドに落とした場合と比べてその差は少ないのは確かです。

しかし、レギュレータを使っているわけではなく多少リップルがありますから、その対策としてバイアス電圧をかけています。

少ないながらも実際にその効果はあります。

なお、AC点灯(TU-870など)の場合は、バイアスをかけることによる効果はかなり劇的です。


ちなみに、すべての電圧増幅管のカソードがグラウンドに対してコンデンサでバイパスされている場合は、この対策は不要です。


蛇足ですが、AC点灯の場合、よく「ハムバランサ」を使いますが、これもヒーター経由のハムの侵入を防ぐ目的ではあります。 

しかし、こちらは「熱電子」ではなく、「静電誘導」対策です。 AC点灯ではハムバランサとDCバイアスを併用すると完璧でしょう。

 

 

 

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